このサイトのボップの特集で、「言語は有機体だ」という比喩が、のちの世代の手でもっと危うい方向に育っていったと予告した。その「のちの世代」の代表格が、アウグスト・シュライヒャー(1821–1868)である。

植物学者から、言語学者へ

シュライヒャーは神学を学んだのち言語学に転じたが、生涯を通じて熱心なアマチュア植物学者でもあり続けた。プラハ大学を経て、1857年からイェーナ大学の教授を務める。この経歴は偶然ではない——植物や動物の種を分類し、系統関係を図示する自然科学者の目を、そのまま言語の比較に持ち込んだ人物だった、と言ってよい。この特集で読む『比較文法要覧』(Compendium der vergleichenden Grammatik der indogermanischen Sprachen) は、1861年、15年におよぶ講義の蓄積から生まれた一冊である。

学生のための、実用的な教科書として

序文でシュライヒャーは、この本の成り立ちをこう説明する——講義のたびに教材を黒板に書き写す手間を学生にも自分にも強いるのがつらく、まず講義録を筆写させ、それがやがて印刷用の教科書へと発展した、と。専門家どうしの論争の書ではなく、初学者のための実用書として書かれたことは、この本の性格を理解するうえで重要である。だからこそ、シュライヒャーは自分の学説を、婉曲な留保なしに、簡潔な断定として書き記す。この率直さが、彼の思想をくっきりと浮かび上がらせている。

ボップ(1833年) 言語は有機体「のようだ」 分析を支える比喩として シュライヒャー(1861年) 言語は有機体「である」 自然科学の主張として 比喩から字義どおりの主張へ——この一線をどう読むかが、この特集の核心になる
比喩の「ようだ」から、主張の「である」へ。図:ToL

この特集の見取り図

この特集では、次の2本で、シュライヒャーの中心的な主張——言語は「生きる」が「歴史」は持たないという断言と、言語の歴史を「進化」ではなく「発展のあと衰退が続く」と見る枠組み——を専門用語なしで紹介する。続く2本は、この二つの主張の原文を、ドイツ語とともに精読する。そして、ボップからの連続性、そしてミュラー・イェスペルセンの特集との意外なつながりをたどったあと、二百年近くのちの視点からの検証で締めくくる。

まとめ

論点内容
誰がアウグスト・シュライヒャー(1821–1868、ドイツ、イェーナ大学教授)
代表作『比較文法要覧』(1861)
もう一つの顔生涯を通じたアマチュア植物学者
この本の位置づけ15年の講義録から生まれた、学生向けの実用的教科書

一言でいえば——ボップが比喩として語った「言語は有機体だ」を、シュライヒャーは字義どおりに引き受けた。この特集は、その転換点を読む。