折口信夫(おりくち・しのぶ、1887–1953)は、民俗学者、国文学者、そして釈迢空の名で歌を詠んだ歌人として知られる。この特集で読むのは、その折口が、日本語という言葉そのものについて語った文章である。言葉を、辞書の上の記号としてではなく、古代の人々の暮らしや信仰のなかで生きていたものとして、読み直そうとした。
二つの原典
この特集の一次資料は、青空文庫に収録されている、折口自身の文章である。
- 「国語と民俗学」(1937年の講演筆記)——「いとほし」の意味の変化、「ハイカラ」の来歴、「言霊」といった、具体的な言葉の話が並ぶ。
- 「熟語構成法から観察した語根論の断簡」(1931)——「橋」「傍丘」「酒樽」「黄金」など、古い言葉のつくりを観察した、短い論文。
この特集で読むもの
まず、三つの記事で、言葉の実例を見る。「いとほし」(やさしい解説①)、「ハイカラ」(やさしい解説②)、そして、古代の複合語の語順(やさしい解説③)である。そのあと、折口自身の文章を、二か所読む。**「言霊」**についての箇所(原文精読①)と、語根の形の変化についての論文(原文精読②)である。最後に、折口の各説が、現在どう扱われているかを、判定の記事で整理する。
先に、お断りしておきたいこと
折口の文章は、厳密な語源研究というより、発想の豊かな講演や論文である。折口自身も、講演のなかで、「話を完全に申上げる事が出来ません」と断り、論文のなかでは、「言葉の研究は、ある程度以上に考へを進めれば、勢ひ推測になる」と述べている。この特集でも、折口の説を、そのまま正解として紹介することはしない。折口が何を観察し、どこから先を推測と断っているかを、読み分けることを、主な目的にしている。
また、この特集の引用は、青空文庫の電子テキストによる。青空文庫は、ボランティアが入力・校正したものであり、原本の画像を、この特集では確認していない。各記事の出典欄に、その旨を明記している。
まとめ
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 折口信夫(1887–1953、民俗学者・国文学者・歌人) |
| 一次資料 | 「国語と民俗学」(1937)、「語根論の断簡」(1931)(青空文庫) |
| 読む言葉 | いとほし、ハイカラ、橋と傍丘、言霊、酒樽など |
| 読みどころ | 観察と推測の区別、言葉を暮らしと信仰から読む視点 |
一言でいえば——折口信夫は、日本語の一つ一つの言葉を、古代の人々が生きた暮らしと信仰の手がかりとして読み、そのなかで、自分の推測の限界も、はっきりと断った。